図柄表:アウグストゥス図柄裏:ルキウスとガイウス発行地:ローマ帝国ガリア属州ルグドゥヌム造幣所発行年:前2〜後4年銘文表:CAESAR AVGVSTVS DIVI F PATER PATRIAE銘文裏:AVGVSTI F COS DESIG PRINC IVVENT額 面:デナリウス材 質:銀直 径:20.4 mm重 量:3.83 g分 類:RIC-I-210ローマ帝国ガリア属州ルグドゥヌムで前2〜後4年に発行されたデナリウス銀貨。アウグストゥスと彼の孫ガイウスとルキウスが描かれている。孫らは槍と盾を携え、鳥占官の杖リトゥウス、儀式の柄杓シンプルムが表されている。アウグストゥスは彼らを溺愛し後継者と見なしたが、両者共に若くして他界。アウグストゥスは悲嘆に暮れた。アウグストゥスが孫への愛情を綴った書簡が残されている。そこには冷淡で残酷な彼の面影はなく、孫を愛し気にかける少し寂しがり屋な老人の姿が映し出されている。西暦12年、アウグストゥスは75歳となり、死を意識し始めた。彼は後継者に次々に先立たれ、自分の死後、ローマがどうなるかを不安に感じていた。そこで彼はギリシアのデルフォイにあるアポロンの神託所に足を運び、神託を授かろうとした。「この世界の今後が心配なのだが、私の死後、誰がこの帝国の支配者となる?」「……」「もう一度問う。誰がこの世の支配者となる?」「……」「どうして何も答えくれない」「どうしてって、それが答えだからだ。世界はとある神に祝福されたヘブライ人の青年によって支配されることになるだろう。そして私はデルフォイを追われる身となり、沈黙するしかなくなるのだ」と、アポロンは神託を下した。そのヘブライ人とはナザレのイエスである。実際、それからキリスト教が普及するとローマの神々は邪神として扱われ、彼らの神殿は閉鎖または破壊の運命を辿った。アウグストゥスは帝国領域の拡大を禁じていた。支配地域の過度な拡大は統制が取れなくなり、帝国が崩壊する要因となることを彼は知っていたからである。だが、軍人上がりのトラヤヌスはこれを破り、帝国の拡大政策を進める。一時的に帝国は潤ったものの、崩壊の歯車は動き始めていた。帝国という基盤を築き上げるアウグストゥスの有能さはやはり秀逸で、他のどの皇帝よりも彼は先見の目という点で群を抜いて優れる。